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本番初日
小屋入り三日目。本番初日

11時入り――のはずが、なぜか私は朝9時には劇場にいた。制作陣は驚いている。寝る間際にとても大事なことを思い出した。パンフレットにスペシャルサンクスが入っていない。芝居をする者は金もなければ時間もない。あるのは情熱と仁義だけだ。無償でさまざまなご協力を頂いたのにスペシャルサンクスに名前が載っていないということは絶縁されると思っていい。こりゃまずいと思って、急遽自宅から必要な機材を持ち込んで、誰もいない客席で作り始める。それがあのごあいさつ文だ。今読み返すと、行間からテンパッている感情が滲みでているようだ。

 さて過去二回にわたって長々と書いたのだが、三日目からは書くことがあまりない。何故なら演出の仕事はもうほとんど終わってしまったのだから。前回で書いた通り残されているのは開演のきっかけを出すことだけ。あとは開演前の一言と終演後の軽いダメだしだけ。芝居の完成度を可能ならばもっと上げたいが、今更の変更は役者だけでなくスタッフにも多大な影響が生じる。そう思うと怖くて今更なにもすることがない。(死にかけの)鬼軍曹として目を光らせるくらいしかない。

 全員が本番に向けて迅速に仕事をこなす傍らで居場所がないとぼやきながらうろうろしていた。邪魔ではない場所を求めていると最終的には劇場の建物裏の外に行き着く。そこでタバコをふかす時間が多くなる。劇場の責任者の方に不意に見られて苦笑された。が、なんだかそれが久しぶりに芝居をやっていることを思い起こさせた。
 
 1ステージ目・受付開始。することほとんどなし。だが、イヤな汗が流れ始める。本番は水物、だからこそ最高の完成度をお見せできるかが心配でならなくなる。それと脚色と演出として関わった本作はなんだか自分の過去の人生から援用した話ばかりでとても恥ずかしい気持ちでドキドキする。正直、満員のドーム球場で辱めを受ける方がましだ。それでも反応が気になるので本番は客席の一番うしろから立ち見。終演、ダメだし、次回本番準備、タバコ――そして二回目本番――本日の全日程終了。芝居の神様はまだ私たちに微笑んでくれているだろうか? いまさらながら、これまでのほぼ順調な進行は私の体力と引き換えにしているような気がした。
 
 2ステ目ダメだしの時、三日目の予定を全てこなしたあとの役者の顔を眺めて少しだけ不安になった。その表情からは真摯な気持ちは伝わってくる。だが、一発本番、NGテイクは許されないこの緊張感を目の当たりにして楽しんでくれているかな、と。一条和矢(あえて呼び捨て)の顔に余裕がなくなり、緊張感だけで前に進もうという意思がはっきり見て取れた。他の役者もそうだ。演出として嬉しいが、少しだけ獏とした不安感が沸き起こる。芝居の神様はえてしてそういうときにいたずらをするかもしれないから。
 
 劇場を出た後、ご招待した大事なお客様と合流して少し飲む。そして芝居のご感想を頂く。
 そのありがたいお言葉を頂きながら、私はちょっとだけ飲んだ。体力にダイレクトに響く。
 しかし、あと一日だけは芝居の神様にお付き合い頂かなければ――私の体力を引き換えにしながらも。


【2005/07/24 12:57】 ながいちか

二日目
 遅くなってすいません。回想記第二回。記憶がだんだん曖昧になってきました。

 小屋入り二日目。

 相変わらず体調がよくない。咳がとまらず、身体もややふらつく。昨日は予定通り終わったので、入り時間が若干遅くなったのが大変ありがたい。
 今日の日程はゲネと呼ばれる本番に全て準拠した通し。それと音響・照明サイドからの要望があれば、きっかけの練習。役者と違い、機材がないと何も出来ないスタッフ陣は事実上、小屋に入ってからのたった数日で本番のオペレーションをマスターしなくてはならない。音響は稽古場にラジカセがあれば軽い練習は出来るが、照明はまさに、本番2日前から機材に触れ、一時間半ほどの芝居の全段取りを把握しなきゃならないのだ。
 今だから明かせるが、ゲネに対して私はあるひとつの仕掛けを用意していた。ゲネの完成度次第では明日からの全日程を取りやめると怒号を飛ばすこと――おそらく役者陣には今初めて知ることだと思う。これは初日の段階から決めていて、スタッフサイドには事前に伝えていた。一番芝居に習熟しているのは役者陣。だが、その日のコンディションによって完成度が大きく左右されるのも役者陣。だからこそ、下手な芝居をしたら中止を宣言しようと思っていた。ロトの紋章持ちである音響・照明・そしてプークの舞台監督はそれを聞いてニヤニヤしていた。言葉にこそ貰わなかったが、その表情から「なに青いこと考えてんの」と言いたそうだが、決して否定的なものではなさそうだ。まあそれくらい、よくあることなのだ。ただし制作はそれを聞いて青ざめていた。昨日から神経を張り詰めさせているので、長井なら本当に中止にさせかねんとびくびくしていた。もちろん中止なんてするつもりはなく、ただ背水の陣で挑みたいだけなのだが、さすがに芝居の神様をよく知らない人には劇場でこれから起こるたった一秒後の出来事も冒険に違いない。

 役者たちが入りゲネ準備開始。本番の衣装を来て、舞台も本番と完全に同じ状態にセッティング。客席に作業用の脚立が残っていたのでこの状態でお客様を呼ぶのかと怒号を飛ばす。慣れていればただ通すだけなのだが、今回は未経験者が多いので客入り30分、お手伝いに一般のお客様、ご招待客の案内のシミュレーションも込みで行う。その間、本当に演出はなにもすることがない。スタッフが各々の使命を果たしてゆく――のだが、なにぶん最初なので諸所まごついているのでその場で指示を出すこともしばしば。楽屋にも一回行き役者たちに気合注入の握手などなど。楽屋での彼らは少しリラックスしていた。それはとてもいいことなのだが、緊張感が少したりない。もしかしたら、本当に怒鳴り散らさないといけないかもしれないと思い、少し胃が思い。基本的に私は小心者である。
 着々と開演時間を待ちながら、急遽5分押しを決定。受付・スタッフ・楽屋にそれを連絡。音響武田は「ゲネで押しってどうして?」と聞いたが、「本番じゃよくあることでしょ」と言うと苦笑していた。開演。
 終演。私は手を叩いて止めた後、役者たちの安堵のため息を無視して即座に二階席へ。照明・音響・プーク舞台監督のもとへ。「完成度はどう?」と聞きまくる。プークの舞台監督さんはそれを聞いてあれこれと感想とアドバイス。その言葉尻からはなんだか嬉しそうだ。初めて通しを見た手伝いを召集し感想を聞く。「金を出す価値はある?」「始まって一言目の台詞で失望する程度のもの?」口調は怖いが、聞いているものは小心そのもの。それらを聞き、あと自分で見た所感を加味して何を言うか決定した――怒らない。なんとかなるだろうと。
 普通にダメだしさせたあと役者を帰させる。制作以外のスタッフも解散。たった四時間ほどの仕込み。これは私の芝居人生の中でも奇跡に近い。二日目で予定が全部まいてる。この手際のよさに少し怖くなる。現在16時前だ。
 そのあと、制作と19時半まで受付・事務周りの打ち合わせを延々行う。彼女たちは不安そうだが、予定通りの進行に明日からの本番をわくわくしている感が伝わってくる。
 
 そして私の体調は更に悪くなる。だが、これでお客様を迎える準備は整った。明日は11時イン。あと私に残されている仕事は開演のきっかけを出すだけだ。最悪私が倒れてもなんとかなるまでの状態に持っていった。まあなんとかなる――はずだった。
 咳が止まらず、身体がとても熱い。やばい、冗談抜きで死にそうだ。
 なのに、芝居のことを考えるとその辛さが消えるのは何故だろう?


【2005/07/24 12:56】 ながいちか

小屋入り回想記
小屋入り初日。

劇場集合時間はスタッフは午前9時。私はそれよりも早い時間、朝七時半に新宿ルノアールに陣取る。目的は図面がまだ用意していない舞台図の図面引き。パンフレットを見て頂けるとわかるのですが、今回の公演には舞台美術と舞台監督が存在しない。つまり、舞台を設営する設計責任者と、『仕込み』と呼ばれる設営作業を統括する人間がいないということだ。えっと、これは誰がやるの? ……やっぱり私? 数日前に照明の基本プランニングをしたから、演出・舞台・照明・舞台監督ならびに制作(事務方)のアドバイスで五冠王だ。ちくしょう、これを誰か役者にでも押し付けたい気持ちに駆られるがそれをぐっとこらえる。パンフにあったごあいさつ文のとおり、仕込とは経験者が培った勘で作業しなければまじで死人が出る。仕方がないことこの上ないが泣ける。昨日から体にガタがきてる。熱くて咳が止まらない。

9時集合して仕込み開始。舞台設営には『ロトの紋章』を持つヤマモトに一任。図面を渡しただけで一瞬で理解してくれた。正直しんどかったので、そんな彼は私には少しまぶしい。今なら抱かれたっていいと本気で思った。

音響は武田氏に一任。彼には全幅の信頼を寄せているので心配ない。そして照明もプークさん。たった二人で効率よく設営してゆく。関係者総勢40人だが、今ここにいる主要メンバーははたった6人。他に私の教え子が数人(当然舞台経験なし)。こりゃ時間かかるかなと覚悟したが、非常にシンプルな設計にしたので滞りなく終了。そのまま照明チェック後、各シーンの照明を照らして微調整する『絵作り』に入る。さすがはプークさんの精鋭の小春さんはサクサクこっちの要望を満たしてくれてさくっと終了。脅威の2時間マキ。つまり予定時間より二時間早く終了。これは幸先がよすぎだ。今までの舞台人生の中で初めてじゃないだろうか。ということで15時の役者入りを待つ。そこからは舞台初経験者がわんさかくる。ロトの紋章を持った我々は緊張感を今以上に漲らせる。絶対に役者を怪我させない。そして更にいい舞台にしなくてはならない。そのために多少の強制は仕方がない。役者は来次第、楽屋に閉じ込めた。演出からの厳命――呼ぶまで出てくるな。

役者を舞台に呼んでまず最初にしたことは、完全暗転の暗さを知ってもらう。役者は稽古上では『暗くなったつもり』でやってたので、それのギャップを知ってもらい、その上で危険性を知ってもらう。その上で場当たり開始。照明・音響・役者のデハケの確認。その上で、稽古場ではOKだった演出が通用しないところがいくつか散見される。その場で演出変更する。小さな所で完成度を上げてゆく。特にクライマックスやエンディングは細かいきっかけが多いので入念に何度も行った……が、それでも予定時間よりも早く終了する。終わり次第、役者をさっさと帰す。基本的に劇場は埃っぽい。彼らの喉のコンディションが気にかかる。

明日はゲネ――完全に本番と同じ状態で通す。
明日も安全にいけますように。


身体はとても重く、熱い。
明日いっぱいまで持つだろうか。(続く)


【2005/07/15 08:35】 ながいちか

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だいぶ興奮や体調も慣れてきて、頭も冷静になってきました。
仕事もいつも通りにこなしてゆく・・と。

今日も現場で「観に行けなかったからサ」とデッカイ花を劇場前に贈ってくれた某番組プロデューサーに事後報告。喜んでくれましたよ。
今さらながらにありがたいことだと思いますね。

アンケートに一通り目を通しました。

辛口批評に怯えて、しばらく手が付けられなかったんですよ(笑)
しかし、意を決して見てみたら・・・赤面するくらいに概ね好評で・・・ホントにありがとうございました。
中には厳しいご意見もありましたが、それは次回に反映できそうな優しいアドバイスでした。

その中でいくつか・・・・

○「朗読劇と云えばイスに座ったまんまの・・ただ本を読むようなイメージを、いい意味で裏切ってくれた」
これは演出ながい氏のおかげですね。『いい意味での裏切り』サイコー!

○「皆さん声優で、声も出てたし、マイクはいらなかったのでは?」
朗読劇ですから〜〜〜〜〜!!!残念!!!

○「一条サン、『あ、噛んじゃった(笑)』ってセリフ、あれマジですか?」
この場を借りて申し上げます・・・あれはアドリブです、ワザとです、マジでッ!!!

このような楽しい質問やご意見を観劇後、細かに書いていただき、ありがとうございました。感激です!感謝です!


【2005/07/12 21:40】 一条和矢

昨日は
死んでました(笑)
皆様本当にお疲れ様でした!
打ち上げ終了後家に帰ってからも、興奮してるのか終わってしまった寂しさか全然眠れなくて、涙も止まらなくて・・・(苦笑)

初めての舞台だというのに、全然稽古に行けなくて。
実は一番皆様にご迷惑をおかけした私です。

ステキな方々に囲まれ支えられ、夢のように幸せな日々でした。
また皆さんとご一緒出来れば・・と心から思います。
団長!またぜひお声をかけて下さい。
ヨロシクお願いします。

最後になりましたが、ご来場くださった皆様!
ホントにほんとーにありがとうございました!!


【2005/07/12 00:46】 ひと美

はふぅ
終わってしまった・・・。
二日間の公演、皆さん本当にお疲れ様でしたm(_ _)m

そして雨の降りしきる中、気温が30度を超える暑い中、
劇団イチタチ第1回公演に足をお運び頂いた総てのお客様、
本当に有り難うございました(ToT)/^

そして声を大にして言いたい!
一条さん、あんたスゲ―や!!

一番最初に一条和矢氏から今回の朗読劇の話をされたのは、もう一年以上も前の話。
正直に言ってしまうと、
「ま、どうせ話半分で終わっちゃうんだろうなぁ。」
と思っておりました。ゴメン。
(実際一度、企画自体が立ち消えそうになる状態に陥ったりもしたしね。)

だけど諦めないんだ、この人。

そんで、昨日一昨日の本番まで辿り着いて、あんなにたくさんのお客様に楽しんでいただけるお芝居ができた。
下の一条さんの書き込みに書いてある「感無量」って言葉、ホントに本心だと思う。
まさに執念の舞台やね(笑)

そして一条さんの・・・いや、みんなの思いがこれでもかと詰まった舞台に参加出来て良かったと思える自分がいます。

もう一度言っておく!
「一条さん!このエロメガネ〜!!(笑)」


【2005/07/12 00:13】 原沢勝広

舞台の神様
 舞台の神様がいっぱい奇跡を起こしてくれました。
 あれだけの舞台で演じ手も、スタッフも、そして何より大切なお客様も混乱無く、問題なく楽しんでいけたのは奇跡なんだとか。
 『色んな事がありました』の3割8分は私のこと(?)
教えてもらって、時間を割いてもらってばかりの毎日でした。
 もし“次回”という言葉が用意されているのなら、次は2割8分の心配ですませたいですね。
 書いている今も不思議でなりません。目が覚めたら本番前のようなそんな感じ。
 きっと「ちこく!遅刻!!」と小屋まで走っているのでしょう。携帯電話がつながらなくって、焦っている私が今もいます。
 苦笑いしているみんなも、そこにいます。

 
  舞台の神様へ
 稽古の間、そして本番の2日間。本当に本当にお世話になりました。私がどんちゃに足を引っ掛けなかったのも、螺旋階段から転げ落ちなかったのも、階段から滑り落ちなかったのも、台本を忘れずに会場入りできたのも、みんなみんな神様のおかげだと思います。
 神様、今回ご一緒させていただいた役者さんたち、スタッフのみなさんは本当に素敵な人たちなんです。
 そんな人たちと共に、またお会いできますように。

 


【2005/07/11 22:13】 蓮香

復活!
ありがとう。
昨日、打ち上げが深夜まで続き、帰ったら午前3時・・・倒れこむようにベッドへ。

身体はなんともないのだが、精神的に疲れた・・・。

ナニがって、あまりにも優秀なスタッフ陣にオレは正直、なぁ〜んにも助力できなんだ・・・そんな自分が情けない。
いや別にソコんところで精神的にどーのとゆうワケではない。

感無量・・ってゆうの?

あれを実感できた瞬間だったね。
お客さんをはじめ、スタッフに『ありがとう』を連発しても言い表せない、いやもう、土下座でもいいくらい(笑)
ナニ云ってんだろ?

そう、言葉に出来ない感動と感謝の念があった。
出演者、スタッフ・・合わせて40名弱の人間が一つの「舞台」とゆうモノ作りに従事したワケで「言い出しっぺ」のオレとしては『涙腺よ、緩んでくれ!』って思ったもの。


皆さん、「ありがとう」


ありがとう


【2005/07/11 20:18】 一条和矢


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